【日本人「名前」の歴史】自分の名字に祖先のルーツ「古い暮らしの姿」を見つけよう!《47都道府県「地名の謎」》 |BEST TiMES(ベストタイムズ)

BEST TiMES(ベストタイムズ) | KKベストセラーズ

【日本人「名前」の歴史】自分の名字に祖先のルーツ「古い暮らしの姿」を見つけよう!《47都道府県「地名の謎」》

姓氏の成り立ちから祖先のルーツを探る

名字を見ると江戸時代以前の暮らしぶりが現れる

 自然の産物で重要なのは、やはりだ。
 山中に湧くきれいな水を大和言葉で「しみず」と言い、のちに漢字を当てる時、清らかな水という意味で「清水」とした。

 地名・地形は古い大和言葉で表現されることが多く、平安時代以降、それに漢字を当てて表記したという経緯がある。通常は万葉仮名(まんようがな)のように漢字の音を当てたのだが、「清水」のように、意味、読み方を取ってつける場合もあったのだ。

「井」というと、井戸が頭に浮かぶが、昔は水汲み場全般のことを「井」と呼んでいた。 
 水汲み場は川や池にあるのが普通なので、「川井」「池井」という名字になり、「井」の上の方に家があれば「井上」である。

 川にはがかかっているが、現代とは違い、昔は大変に珍しい構築物で、その土地の象徴として地名や名字になった。
 村の中でも高いところに橋があれば、日本人名字ランキング3位の「高橋」になる。

「こうして名字の成り立ちを見てみると、江戸時代以前の日本人の暮らしぶりが現れていますね」と森岡さん。

 ありふれた名字でも、そこには長い歴史がある。自分の名字をきっかけに、遠い昔の日本人の生き方に思いを巡らせるのも楽しいに違いない。


◼︎「藤田」さんに隠された謎“ふじた”は“ふちた”?

「藤井」「藤山」などの名字に使われる「ふじ」という言葉は、藤棚で育てられる藤の花ではない。
 昔の言葉でふじはツル植物全般を意味している。
「藤井」
ならツル植物の生えている井戸だろう。
 しかし「藤田」というと、田んぼにツル植物が生えているはずはなく、奇妙な情景だ。実は「ふじた」の旧仮名遣いは「ふぢた」「ふちた」で、たくさんある田んぼの端を意味する。そこにイメージのよい漢字を当てたのだろう。


(2020年『一個人』5月号より構成

KEYWORDS:

オススメ記事

森岡 浩

もりおか ひろし

姓氏研究家

森岡 浩

姓氏研究家
1961年4月10日、高知市生まれ。早稲田大学政経学部卒業。在学中 に独学で姓氏研究を始め、文献調査とフィールドワーク、統計、実証的 手法を用いて多くの発見、成果を生む。 NHK総合「日本人のおなまえっ!」コメンテーターとしても活躍。著書に『名字でわかるあなたのルーツ』(小学館)、『47都道府県・名字百科』(丸善出版)など多数。
https://office-morioka.com/profile.html

 

この著者の記事一覧

RELATED BOOKS -関連書籍-

一個人(いっこじん) 2020年 05 月号
一個人(いっこじん) 2020年 05 月号
  • 2020.04.09